全力で仕事するとコーヒーカップにミルクが入らなくなる

大矢根 翼

新卒でカルソニックカンセイ株式会社(現:マレリ株式会社)に入社、法人営業を担当。2021年に退職後はフリーライターとしてEC業界からモータースポーツ、教育機関まで幅広い取材記事を約500本執筆。
執筆記事は多くが数年経過後も検索トップに残り続けている。
並行してSEOディレクション、求人媒体開発などにも従事した経験を活かし、株式会社ギルギルタウンに参画。
ウェブ施策を担当。データを活用したユーザーインサイトに基づくコンテンツ制作を得意とする。

こんにちは、まじめにふまじめ大矢根翼です。

僕は「タスク」という名前なのに「タスク」と呼ばれる状態の仕事が大嫌いなんです。
好きな曲をアラームにするとその曲が嫌いになるみたいなアレ?違う?じゃあ本題入りますね。

芸術は余白にしか描きこめない

もうコレが答えです。

人は余白を前にしたときにしかクリエイティビティを発揮できないんです。

「絵を描きたいなー」っていくら思っても、白紙とペンがないと始まらないじゃないですか。
「手元の免許証に血で描けばいいのでは?」みたいなクソ反論は一旦控えてください。

この記事だって上司にうまいこと言って仕事の手が空いた隙に書いているわけです。

「余白」って結構いろいろな種類があって、いずれかが欠けるだけでクリエイティビティは縮んでしおれてしまいます。

わかりやすい余白は「時間的余白」とか「体力的余白」。
すごく卑近な例を出すと、1日の稼働時間8時間を全力コーディングに費やしたら、時間も体力も使い果たして「寝る」しかコマンドがなくなるじゃないですか。

そうすると書こうと思っていたブログも後回しになるし、作ろうと思ってたプログラムも後景にかすんでいきます。

とはいえ企業の経営者なら思いますよね。
「同じ給料を出すならぶっ倒れる寸前まで働き抜いてくれたほうが助かる」って。
「仕事の時間で好き勝手なブログ書いてんじゃねえぞ」って。

確かに限られた時間の中で生産性を最大化して、自社の市場価値を高めることは大切です。
でもそれって、明日の畑にまく種もみを食いつぶしているだけかもしれませんよ。

余白を潰した先にある避けがたい破滅

体力や時間などの余白を業務に持たせることは、「働く人がクリエイティビティを発揮できるようにする」とかいう抽象的な理想論ではありません。

破滅①致命的な事故が発生する


ここはとある自動車工場。
金曜日の作業が終わり、終業前の1時間に作業員が改善提案を出し合うディスカッションが始まりました。

出てくるのは荒唐無稽なアイデアや、「床のシール貼り位置を5cm変える」などの地味~な提案。
1時間後に班長は「みんなありがとう、今週もお疲れさまでした」と言って従業員を送り出します。

班長はすべての作業が終わったことを確認すると、「無事故日数記録」のボードを1日ぶん更新して家路につくのでした。
そうやって積み重ねた現場の無事故日数は数千日におよび、班長は自分が昇進してから一度も本物の労災報告書を書いたことはありません。(一部フィクションです)


この工場はなぜこんなに安全な運営ができているのか。
僕の答えは金曜夕方の改善提案会です。

机に向かってペンを走らせる時間は、1週間のあいだ危険の伴う重労働をしてきた人たちにとって憩いのひとときになっていました。
提案が採用されなくても、その時間は体力の代わりに頭脳で会社に貢献しているという承認が与えられていたのです。

そして、この時間を居眠りタイムにしないためには、作業員が金曜日の17時に疲れ果ててしまわない業務設計が必要です。

逆に言うと、金曜日の17時に疲れ果ててしまうような業務を設計すれば、疲れ果てた作業員が16時59分に取り返しのつかない事故を起こす可能性があります。
溶接している間に寝落ちしたら?ぼーっとして溶鉱炉に落ちたら?フォークリフトで同僚を轢いたら?

重厚長大型工業の現場以外でも同じです。
一見安全なオフィスワークだって、疲れ果てたときのミスで社内の稟議資料を客先に送ったらヤバいですよね。
工場のように死にはしないけど社内からの信用は終わります。

原理として、公然と限界まで働く職場は「限界」が原因の事故を看過しています。
だって「余裕あるじゃん」と仕事を積み上げていき、壊れたときはじめて「そこが限界だったんだな」とわかるので。
生身の人間でストレステストするな。

というわけで上司が「まだ余裕そうだな」と思っていない職場は、非常に近い未来にものすごくヤバいことが起こる構造に仕上がっています。

破滅②競争力喪失の時限爆弾がセットされる

市場経済ってのは嫌なもんで、同じものを永遠に作り続けて永遠に同じ給料をもらい続けることはできません。

100円でガムを作っている会社Aが5%の純利益を出し続けていたとして、別の会社Bが「純利益4%でも構わない」と参入して来たら市場シェアを取られて最初の会社は潰れます。

会社Aは5%の利益を出しつつ、余力を使って会社Bが参入してきても大丈夫な体制を作る必要があります。
しかし、毎日全社員が疲弊するまで仕事していたら、日々の業務を回すことに必死で目先のことしか考えられなくなりますよね。

そんな状態になったとき、会社Bの参入が市場シェアを奪う「その時」までの時限爆弾がセットされるのです。

従業員が荒唐無稽なことを言ったり、しょうもないことをする余白こそが、時限爆弾を解除する道具となり、知識となります。

儲からないことはだいたい楽しい。でも…

お金にならないことって結構楽しいんですよね。
僕の場合は趣味がサバゲー、ダイビング、クルマ、FPSと色々あるのですが、どれもこれもお金ばっかりかかって全然儲かりません。

逆から考えると、面白いことはみんなお金を払ってでもやりたがるから儲からないって話でもあると思います。

でも、趣味って結構高じるんです。自分語りターンが続きます。

僕はサバゲーが好きでブログを書いていたらちょっとしたお小遣いになって、それがきっかけでライターの仕事も貰えて、ライターをしていたら開発が楽しくなって、今はギルギルタウンで働いています。

たった一人の人生をとってみても、好きなことをやっていたら社会に新たな付加価値を提供できる「何か」に昇華できるんです。
会社や社会全体が余力をもっと肯定的にとらえたら、世界はもっと面白くなるのになと思っています。

だからコーヒーカップにミルクを入れる容量を残しておくように、「なんかやり切れてない気がする」みたいな状態を少しだけ大事にしてみてはいかがでしょうか。