毎年1か月間の「自社制作期間」

祇園 涼介

会社の代表を務める。
カバ好きが高じて商社勤務、ジーンズ屋を経てギルギルタウンへ。
最近は歯磨きのフォームを改良し、絶好調。自慢の大前歯が自己ベストを更新中。
好きなことは乗馬と旅行。

──創造と成長を止めないための“ギルギルタウンの文化”

ギルギルタウンでは、毎年必ず1か月、全クライアントワークを停止する。
そして、その期間を「自社制作期間」と呼ぶことにする。

創業5期目、2026年7月が最初の自社制作期間になる予定だ。そしてその後は、前年度に最も忙しく、業績の良かった月を丸ごと自社制作期間にしていくつもりだ。

ギルギルタウンのメンバーは、30日間で作品をつくり切り、31日目に発表会を行う。
この1か月は、ギルギルタウンにとって文化であり、誇りであり、進化の核となるはずだ。


営業を止めるという決断

年間12か月のうち、1か月売上を止める。
もちろん、いつもお世話になっている取引先様にも大変なご迷惑をおかけすることになる。
いわゆる経営的に見れば、ありえない決断だ。

  • 売上が立たない
  • 仕事を断らなければいけない
  • メンバーに不安を与えるリスクもある

多くの会社は、採用しない選択だろう。

でもギルギルタウンは、あえてそれを“当たり前”にする。
なぜか?

守りに入った瞬間に、全てが同時に腐り始めるからだ。

目の前の課題を解決する仕事だけをしていると、知らないうちに「期待に応える制作」ばかりになる。そういった、ある種の効率的な逆算思考は、我々の頭をじわじわと“挑戦しない脳”へと変化させていく。個人にとっても組織にとっても最も合理的だからだ。もちろん、中で働く人が”優秀”であればあるほどその適応スピードもはやくなる。

それを防ぐためには、意図的な「挑戦環境」をつくる必要がある。


言い訳ができない環境で、出力は最大化する

自社制作期間は、逃げ場がない。

  • 「クライアント要望が時間を奪って…」と言い訳できない
  • 「予算がないからできない」とも言えない
  • 「忙しいので後回し」も通用しない

やるしかない状況 × 何をやってもいい自由

この2つが同時に成立する環境は、クリエイターにとって地獄であり、天国だ。

ここで初めて、クリエイターの真価が問われる。
私たちのチームは、まだポテンシャルの10%も出せていない。
その残りの90%を解放する仕掛けの一つが、この自社制作期間だ。


「1か月の挑戦」を続けた5年後、10年後に何が起きるか?

この文化が積み上がると、何が起きるか。

想像してみてほしい。

  • 1年で1本 × 10年 → 10本の自社作品
  • 10本の作品が、会社の世界観とブランドを作る
  • それを見た若者が「ここで働きたい」と集まる
  • 気づいた頃には、ギルギルタウンは“文化の発信源”になっている

作品は資産だ。そして、資産を持つ会社は強い。

受注型の会社ではなく、創造力で世の中を動かす会社になるための仕組みがなければ、我々の目指すビジョン、「人のエネルギーを最大化させる」には到底届かない。

大きくなったら挑戦するのではない。
小さい頃から挑戦し続けた会社だけが、未来を作る。

血を吐いてでも、会社が潰れる危機に瀕してでもやらなければならない。
というより、これをしないくらいなら、さっさと会社を潰した方がいいだろう。


「ギルギルタウンで働く理由」が生まれる期間

自社制作期間は作品づくりだけが目的ではない。

  • 自分の“好き”を思い出し、問い直す
  • 実験と失敗を許す文化をつくる
  • 仲間の才能に衝撃を受ける
  • 自分の限界を更新する

ここで生まれる体験は、人生を豊かにする。
そして「この仲間と働きたい」と心から思える瞬間が生まれる。


終わりに

自社制作期間を毎年つくることは、経営判断としては狂気に見えるかもしれない。
でも、人間として当たり前の変化を会社単位でもやるだけだ。

取引先の皆様には、弊社の勝手でご迷惑をおかけすることを大変申し訳ないと思っている。
それでも、我々がこの選択を取ることのほうが世のためになると信じているからやる。

世界のメインストリームに挑む会社になるためには、
自分たちの内面に本気で向き合う時間が必要だ。

挑戦と自由が同時に存在する1か月。
ここで培われる“創造する力”が、ギルギルタウンの未来をつくる。

もちろん、この経営判断が正しかったかどうかは、未来の結果が決める。

この文化が、必ず会社の歴史になると信じて進む。