「大きくなったらやる病」の重症患者たちへ

祇園 涼介

新卒で大手総合商社に入社。退職後、国産ジーンズブランドRockwell Japanを創業。ゼロからのブランド運営で培った発信力と経験を活かし、知られていない企業の魅力発掘と認知度向上に貢献するため当社を共同創業。
ABEMA TV「ABEMA NEWS」、テレビ朝日「激レアさんを連れてきた」、日本テレビ「スッキリ」オープニング出演などその他多数メディア掲載・出演。

──同じ図形を、でかくする話

この小さな会社を大きくしないといけない。

では、どんな形で大きくすれば良いのか。


会社がでかくなったら、何がしたい?

資金が潤沢で、設備が揃って、メンバーが増えて、スキルが集まって。
「いよいよ本気出せる」みたいな状態になったら、何がしたいのか。

答えは、今と同じだ。
というか、同じでなくてはならない。

なぜならギルギルタウンは、
「互いの夢を担ぐ」ことで動く会社だからだ。

売上、拡大、成長。もちろん大事だ。
期を重ねるごとに大幅に伸ばしていかなければならないことも分かっている。
でもそれらはエンジンじゃなくて、車体のサイズの話だ。

エンジンはいつでも、「お互いの夢を担ぎ合う、愛の企業文化」である。

この構造が歪んだ瞬間、
ギルギルタウンは”別の何か”になる。


「大きくなったらスポンサーするよ」病

会社が小さいうちは、こういう言い訳が出てくる。

  • 余裕ができたら
  • 資金が貯まったら
  • 人が増えたら
  • 安定したら
  • そのうちやる

そして、会社が大きくなるとこんなことを言う。

  • もっと予算がついたら
  • 意思決定が速くなったら
  • 組織が整ったら
  • ブランドが強くなったら
  • 守るものがない小さな会社だったら
  • そのうちやる

悪質なのは「一生そのうちが来ない」ところだ。
そしてさらに悪質なのは、言ってる本人が一番それを信じているところだ。

「大きくなってからやろう」

この言葉は、発すると同時に、
“今やる構造”を失うことになる。

「大きくなったから、できる」じゃなくて、
「大きくなったのに、できない」になる。

理由は明らかで、その瞬間にやってないからだ。
やってないことは、できない。


麦わら帽子のスケール観

ジーンズ屋として起業したばかりの頃、
とある高級麦わら帽子ブランドの社長と出会った。

その人は、経営者であり、
同時に、とんでもない腕を持つ職人だった。

麦わら帽子は、
細長い紐状の素材をくるくると回しながら、
2本の紐の継ぎ目をミシンで縫い上げて作られる。

麦わら帽子を作るための紐(引用)

シリーズによって紐の幅は違う。
幅が広ければ、ミシンの入るスペースも広い。

でも、そのブランドの最高級ラインは違った。
使う紐は、針の太さとほぼ同じくらい細い

針がほんの少しでもズレたら、
二つの紐は縫い合わさらず、帽子にならない。

それを見た瞬間、私は思わず口に出してしまった。

「いや……それ、縫うの無理じゃないですか?」

社長は、少しも驚かず、
当たり前のように言った。

「太い紐の時と一緒。
普段から針をズラして縫ってないから。
スケールダウンするだけ

鳥肌が立った。

帽子職人の仕事(引用)

やっていることは同じ。
ただ、図形が小さいだけ。

普段からズラさず縫ってる人間は、
細くなっても何も変わらない。

会社も、カルチャーも、夢の担ぎ方も、
全部これだと思った。


ラリーをやるなら、“今”やろう

翼と敏樹が、ラリー競技に挑戦するらしい。

二人とも、幼少期からモータースポーツに触れてきた。
だけど業界からは距離を取って、一回離れた。
たぶんそれぞれの人生の都合とか、現実とか、いろいろあったんだろう。

そして今、二人はここで出会い、
もう一度、その夢に向かって走り始めた。

レースのことをほとんど知らない私でも、
彼らの年齢を見れば、それが決して早いスタートでないことくらいはわかる。
むしろ、超遅い部類だろう。

普段は、驚くほどスーパーロジカルな二人だ。
計算もできるし、現実も見えている。
そんな二人が、
「それでもやる」と言う。
いろんな種類のリスクなど百も承知の上で、命を懸けて目指すと言う。

その覚悟を聞いたとき、
私は少し震えた。

こういう話が好きだ。
というか、こういう話こそがギルギルタウンだ。

よくあるムーブがある。

「会社が大きくなったらスポンサーするよ」
「余裕できたら資金援助するよ」
「試合見にいくよ!陰ながら応援してる!」
「儲かったらでかいことやろう」

全部、意味ない。

今やろう。しかも会社をあげて一緒にやろう。

資金がないなら、ないなりの支え方をする。
設備がないなら、今ある道具で工夫する。
人が少ないなら、少ないなりに“全員が関わる”形で支える。

リソースに関わらず、人の心を動かすことに熱狂する。
それがクリエイティブの本質だ。

構造は今からずっと同じだ。
会社の成長とともに変わるのは、スケールだけ。

同じ図形を、デカくするだけ。


結論:今やれ。今のサイズでやれ。

ギルギルタウンはきっと大きくなる。
でも、だからこそちゃんと文字に残して自分自身を戒めておく必要がある。
(もし私が方向を間違えても、みんながこのブログ魚拓をもって抗議できるように)

大きくなってからやるな。今からやれ。ずっとやれ。

ラリーも、自社制作期間も、1-1アウトドア(まだ非公表)も全てそうだ。
「うちの会社はこういう会社だ」という宣言は、

今この瞬間の、行動でしか証明できない。

会社が大きくなった時にやりたいことがあるなら、
それはもう今、やるべきことだ。

結局は同じ図形を大きくするだけなんだから。